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名も無き海の境界線の日記です。ぐだぐだ書いていくつもりです。
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 書くことがないので気の向くままに小説書いてみたいと思います。

 とりあえず何だか暗めで本編のエトリアからハイラガードに繋がりそうな話…。
 予定は未定なんですけどね(笑



「悲しいものだ…。もはやあの方のような者は一人も残っていないのか…。」

 アルケミストはその黒い髪を風に遊ばせたまま呟く。
 紅蓮の瞳はエトリアの街の暗い空の深い闇を射抜き、そのため息は少しだけ寒くなり始めた街の空気を白く染める。

 目の前に広がる、街並み。かつてはすべての人間がその謎を解こうと必死になっていた。
 しかし、今ではどうだろうか?
 小銭目当てで浅い階層で満足するもの…。謎など興味なく、そこから得られる名声や富を目的とするもの…。強さを求め、樹海の魔物と戦うだけのもの…。

 彼の眼にはそれらがとても愚かに見えた。彼の眼にはそれらがとても小さく見えた。

 暗い空の深い闇を射抜く瞳の色は紅蓮色、漆黒の髪は夜風とダンスを踊る。

 彼は望む。樹海の謎だけを求めるものが樹海を踏破することを。
 崇高な意志を持たぬものが樹海の謎を解明しないことを…。

 自分一人では無理なことがわかっていた。自分ではあまりにも実力が足りないことを…。
 しかし、悔しいと思ったことは今まで思ったことはなかった。
 あの方のように立派な意志をもった方がきっとどこかに居て自分の代わりに世界樹の迷宮の謎を解くと思っていたから…。

 だがこの街の腐敗はなんということだろう…。あの方が見たらどう思うだろうか…?
 もう、ここには樹海に潜る…樹海の謎を解く資格のあるものはいない…。
 男はそう思った。

「―――――――――――――――――――――――」

 空から歌が降ってくる。優しい歌声が暗い空の深い闇から降ってくる。
 歌を聴いて漆黒の髪が風と踊る。紅蓮の瞳は歌の聞こえる暗い空の深い闇を見据える。

 歌を歌うのは一人のバード。夜だと言うのに、その髪は太陽の光沢を宿し、ブルーグレーの瞳は暗い空の深い闇のようであってどこまでも澄み切っていた…。

――純粋――

 そんな言葉が浮かんで鼻で笑う。
 街中で歌うバードなどただの気まぐれ、強い意志などない。ましてや樹海の謎など求めていない。自分が歌うので精一杯なのだから…。

 漆黒の髪を風に遊ばせ、紅蓮の瞳は今、暗い空の明るい月へと向けられる。

 アルケミストが去ったその後には空から降り注ぐバードの唄声だけが残った。
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