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名も無き海の境界線の日記です。ぐだぐだ書いていくつもりです。
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 一周目のEDの直後あたりを妄想して書いた自ギルド話。
 完全に妄想の産物な俺得小説。
 世界樹の迷宮3のプレイ日記を読まないと何が何だかわからないと思います。
 当然のごとくネタバレあり。
 あと、プレイ日記読んでた人ならわかると思うのですが、ホモなカップリングに見えなくない表現があります。憧れと癒しのもふもふ程度の気持ちで書いたのですがやっぱりちょっと危ない気がしたので注意書きとして載せときます。

 上の分を読んでやばそうだなと思ったかたはアリアドネの糸で逃げてください。
 それ以外の方はどうぞ


~前編~

「おはよう」
 アルノルトがそう言っていつも通り席に着く。
 窓の大きく開いた宿の一室に集まって、五人は食事をすることに決めていた。
 まだ、髪のセッティングが終わっていないシャルロットがポニーテールに結わえただけの状態でアルノルトの正面の席に座る。
 スティーブはいつものバンダナはこの時は外している。左前髪をあげた可愛らしいピンを付けたその姿はもう珍しくもなんともなくなっているが、アルノルトは始めてそれを見たとき、驚いたことをぼんやりと思いだした。
 フィオーレとモニカが協力して今日の朝食を出す。担当はフィオーレだったようで相変わらずの焼き魚と白米、そして今日はわかめと玉ねぎの味噌汁が出てきた。女性陣にはヘルシーで人気な料理をアルノルトはこのカロリーで一日頑張れるかをぼんやり考えながら見つめた。美味しい。美味しいのは事実だがもうちょっと量がほしい。
 そんなことを考えているとみんなが席について「いただきます」と言う。
 フィオーレは料理担当の日は髪をやっている時間がないのか大体ポニーテールにしている。それを見たとき、確かスティーブからは評判が良かったような気がする。しかし、いい加減見慣れたのか、フィオーレから何らかの報復があったのか、スティーブは最近ではそこまで反応せずに大人しく食べている。
「今日は夜まで自由行動で良いのよね?」
 モニカが問いかける言葉にシャルロットが「ああ」と答える。
「その代り、夜にはちゃんと帰ってくるんだぞ?日記を燃やすんだからな」
「ん、わかった。じゃ、とりあえず昼飯付き合えよ、アルノー」
 フィオーレがすぐさまアルノルトに声をかける。アルノルトは少し嬉しそうに頬をほころばせて「うん」と了承する。
 
 そうして食事の後、みんなは各々解散していった。
 
 
「あぁ…久しぶりだね」
「…船、貰ったのに放置してごめんなさい。」
 モニカが訪れたのはインバーの港。モニカは一人海にこぎ出すつもりで港に来ていた。
 この港を管理する老人は眼鏡越しに移る少女を見て優しく微笑む。
「かまわないよ。ただ、悩むことがあるなら海に出て釣りをするのも悪くはない」
「いえ、アモロスギを探しに行くんです。きっと、陸路を行くよりは海路を言った方が安全そうですから。」
「成程。なら、帰ったらわたしのところによって行きなさい。そのころまでには夕食に添えられるような魚をどうにか用意してみよう」
「ありがとうございます。」
 モニカは柔らかな笑みを浮かべて船に乗り込み…
「まずは掃除が必要かしら」
 箒を借りに再び船から降りて行った。
 
 
 アルノルトとフィオーレは広間に出てぼんやりと海を眺めていた。
 遠く水平線のかすんで見える海をアルノルトはまぶしそうに見つめる。
 しばらく黙っていた二人だったが、ようやくフィオーレが言葉を紡ぎ始める。
「おれさ」
「うん?」
「グートルーネと戦って思ったんだよ」
「……?」
「言わないまんま終わらせるのはよくないなって。そうすることで後悔するってのは…嫌だな」
「…うん、そうだね」
 フィオーレの言葉に同意する。フィオーレは笑って言った。
「だからおれ、魔を倒したら前のギルドが今どこにいるか探してみるわ」
「……前のギルド?」
「そ、そこのギルドリーダーにちゃんと『嫌いになったわけじゃない』って言ってやんないとな」
「前のギルド!?」
「あれ?言ってなかったっけ?日記にも一度書いたような気がするけど気のせいか?」
「……そんな気もするけど、どこにいるかわかってるの?
「わからないから探すんだろ?」
「あ…そうか。えっと…なんで前のギルドはやめたの?」
「ヒミツ。こればっかりは…な」
 フィオーレがさみしそうに笑う。アルノルトは追及しちゃいけないんだろうなと思い黙る。
 大きく伸びをして空気を吸い込む。慣れた潮風の匂いなのにこんなにも心地よく感じるのは、やはり何かを成し遂げた後だからだろうか…。
 フィオーレはそう思いながらアルノルトに向かってさらに言う。
「後おれさ」
「うん?」
「姫さんのこと…好きなんだ」
「……!!?………え……?」
「お前も好きなんだろ?姫さんのこと」
「え…あ、うん」
 顔を赤くしながらもアルノルトが素直に頷く。フィオーレは勝ち誇ったように笑いアルノルトの髪を帽子越しにぐしゃぐしゃと撫でる。
「おれは告白しない。アルノーは告白しろよ」
「なんでっ?さっき、素直になった方が良いって自分で言ってたばっかりだよね?」
「そうだけど、結果のわかってることにムキになるのもちょっとばかみたいじゃね?」
「結果のわかってることって…」
 アルノルトが不満気に声を漏らす。フィオーレはくつくつと笑うとアルノルトの目をまっすぐに見つめて言った。
「おれは、自分が幸せになることよりも、好きな子と親友が幸せになってくれる方が嬉しいんだよ、バーカ」
「……あ……。フィオ……ありがとう、大好き」
「おれもお前のこと好きだよ」
 フィオーレは苦笑する。自分の生きてきた決して長くはない人生の中でこんなに本音だけで語っているのは初めてかもしれない…。いや、前のギルドのリーダーと会った時以来か…。
 そんな風に思い出を懐かしみ始めたフィオーレを横にアルノルトが何かを思い出して顔をさっと青くする。
「大変だよ、フィオ!」
「んー?」
「シャルロット、フィオーレがスティーブとラブラブだと勘違いしてるよ!?」
「……はぁっ!?」
「ほら、一昨日色々あったじゃない!」
「…あったなぁ」
「その時の会話でフィオ『好きな人が居る』って言った好きな人をスティーブだと思ったみたい」
「……はぁっ!?なんでおれがあんなガキ好きになんなきゃいけないんだよ!?」
「フィオ、一応年上」
 突然怒り始めるフィオーレにアルノルトはやんわりとつっこみをする。
 フィオーレはスティーブのことについて考えて苛立ったように声を上げる。
「大体、盲祓の面がいい加減意味なくなってきたから百中ゴーグルプレゼントしたらあいつ…『盾がもてなくなっちゃう』とか言いやがったんだぞ?面とゴーグル一緒につけるつもりかよ!?…マジで一生大事にするつもりかよ…あの、バカ……」
「……フィオ、世間一般的にそういう反応するとツンデレっていう風に認識されるかもしれないらしいよ」
「…アルノーはそういう知識どっから手に入れるんだよ?」
「本」
 呆れ気味につっこむフィオーレに即答するアルノルト。フィオーレは苦笑してから言った。
「ほら、昼飯おごってやるよ」
「え、良いの?」
「ああ。どうせ同じ財布だからな」
 
 
 白い天井。意識がぼやける。
 あれからどうなったのだろう?姫様は…?自分が負けたと言うことは姫様に負担をかけてしまったのだろう。不甲斐ない…。
 
 クジュラはぎりっと奥歯を噛んだ。とにかく状況を知ることが先決だと起き上がろうとした視界の端に秋に向かうイチョウの葉のような髪色の少年が映った。
 ア・ラ・カルトに所属しているウォリアー…。それさえわかれば、何が起きたのかは容易に想像できた。
 悔しさのあまり涙が出そうになったが、敵の前で涙を流すこともできず、クジュラは相手を睨みつけた。
「何しに来た?」
「お見舞い」
 わざと突き放すように言ったつもりだったが少年は屈託なくそう答えた。そうだ、この少年はどんな時も自分に絡んできた。
 最初に会った時もこっちが「新米か?」と聞いたのに対して「あんたこそ誰?」と返してきたのだ。たいていの者は素直に答えるか見栄を張る。故に予想外の反応とその容姿でやけに記憶に残ってはいた。
 第二階層でやたらむやみに報告に戻ってきたり、三階層でむやみに会話を引き延ばそうとする姿も、四階層に踏み入って、近くの地形と魔物の強さを確認をしていたところ仲間を抱えて泣きながら磁軸へと向かって行った姿も…。
 何がこの少年の中で変わったのかわからないが、気付いたら「クジュラさん」と慕われていた。
 自分を慕ってくれるものに悪い気はしないが、それでも姫様を殺したのだ。そんな相手を許せるわけがなかった。
「あ、できたよ!うさぎさん」
 スティーブはにこにこ笑いながらうさぎの形に皮をむいて切ったリンゴをつまようじに刺してクジュラに差し出す。クジュラはどう反応すべきか悩み、眉を寄せる。
「あのね、お見舞いの時はりんごって聞いたの」
「それにしてもなんで兎なんだ?」
「可愛いでしょ?」
 本気で言っているとは思えない返答に困りながらも小腹が空いていたために手に取る。手に取ってから男が作ったとは思えない絶妙な角度の兎の耳(の形をしたリンゴの皮)を見つめていたが、何かを期待するかのような視線を感じて仕方なく口に入れる。
「どう…?おいしい?」
「誰が作っても、味は同じじゃないのか?」
 ドキドキと緊張しながら尋ねるスティーブに対してクジュラは冷静に、つとめて冷静に見えるように対応する。しかし、そんなそっけない反応でもまずいと言われない限りは嬉しいらしく「よかったぁ~」とにこにこし始める。
「えっと…ごめんなさい」
「………」
 突然の謝罪。クジュラはそれが白亜の姫を…グートルーネを殺してしまったことに対する謝罪であることは理解した。しかし、言葉が出なかった。
「その選択しか、あの時のオレたちは知らなかったの。今もね、正しいことはわからないの。だから、ちゃんと魔やフカビトはきちんと倒すから…ね」
 そこまで言って、スティーブはわきからごそごそと刀を取りだす。それはクジュラの刀だった。スティーブはそれをクジュラに持たせるともぞもぞとクジュラの居るベッドの上に乗る。
「おい」
「それだけでも不満ならオレを殺して?それで、満足したら…できたらア・ラ・カルトのみんなと一緒に協力して魔を討って欲しいの。…ダメ?」
 クジュラの制止も無視して、スティーブはクジュラの体に馬乗りになってじっとクジュラの顔を見つめる。
――仇が討てる
 そう思うと同時にどこか虚しい気持ちになる。ア・ラ・カルトのメンバーを殺すことは魔を滅ぼすことの妨げになる。しかし、姫君が本当に望んでいたのは魔の滅びではなく、兄に会うことだった。
 単純で、動機と呼ぶにはあまりにも個人的で…故に純粋だった。
 どんな時でも、姫様は純粋だった。純粋に人を、兄を、世界を、全てを信じていた。そんな姫様の命を奪ったのが…同じ無邪気な赤い瞳なのだ…。そう思うと悔しくて、どうしようもなくなってくる。
 
 どれくらいの時間こうしていただろう。
 クジュラはしばらくしてため息一つ漏らして答えを出す。
「駄目だ」
「……うん。じゃぁ、とりあえずいいや、ざっくりやっちゃって。遺書的なものは宿に置いといてあるから」
 ずいぶん準備の良いスティーブにクジュラは面白いものを見るように唇を笑みの形に歪める。そうして、スティーブは目をつぶる。
 クジュラはスティーブの背に手を回すとぎゅっと抱きよせた。スティーブが驚いて目を開くとクジュラは肩をすくめて見せると言った。
「俺がダメだと言ったのは殺しに対してだ。お前を殺したりなんかしない」
「……え…あ……へ?あの、じゃ…じゃぁ、ジャマだったり…あのほら…オレ、一応カタキなんだし…ね?」
「邪魔じゃないから、もう少し一緒に居ろ」
「えっと……」
「とりあえず、布団の中に入れ。重い」
「あっ!!ごめんなさい」
 スティーブが慌ててクジュラの上からどくと靴を脱いで布団の中にもぐりこむ。クジュラはスティーブを抱き枕か何かのように抱き寄せる。
「…ちょっ…待って…オレ、これ恥ずかしい!」
 スティーブが真っ赤になってクジュラの腕の中で暴れる。クジュラは「大人しくしてろ」と言いながらも内心ため息を漏らす。
 大人が二人、ベッドの中に入っているのを見てただの仲良しと思う人は少ないだろう。むしろ、「恋人同士」だとかそういう風に思われてもおかしくない。それが同性ならば怪しい風に思われても仕方がないだろう。衛兵隊の風紀を乱したくないのでできればそう言う噂にはなりたくないが衝動と言うものはどうしようもない。大型の猫を抱っこしているようななんだかどうしようもなく癒される気持ちになりながらクジュラは一度瞳を閉じた。
 その気配を感じて、スティーブはじっとクジュラの顔を見つめる。整った顔立ちが間近にあって、スティーブは真っ赤になって俯いた。こんなに密着してお昼寝して、他の人に見られたらこの人どうするんだろう…と思いながら…。
――ま、オレはもともと評判がよくはないから良いケド
 
 
――本当に綺麗。
 モニカはぼんやりと海を眺めていた。
 船から見る海は、普段見る海よりも近い。ビスケットをかじると控え目な塩味が口の中に広がった。
 島の周りをぐるりと回ってみることにして三時間ほど、樹海の中に居る時とは違ったゆるやかな時間がモニカのまわりに流れていた。
――今頃みんなは何をしているのかしら?
 そう思いながら島の方をじぃっと見つめる。まだまだそれらしきものは見つからない。
 フィオーレとアルノルトはおそらく一緒に居るのだろう。朝食の時に誘っていたわけだし。その時にスティーブが「オレも行きたい」と言いださなかったということはどこか他に行く用事は決まっていたと言うことだ。
 酒場だろうか…。それとも…元老院?元老院に行くのは自分だったら絶対にしない。気まずすぎる。いや、あの男ならそのあたりのことは空気を読まずにやってしまうだろう。
 シャルロットは何をするのだろうか?街の人と話でもするのだろうか…。やっぱり、あの子のことはいまいちわからない。
「アモロスギ…、見つけたら多めに取っていこうかしら」
 ぽつりと呟く。本来ならアモロスギを求めるご老人に渡す分だけで良いのだろうが(と言うよりも未だにご老人がアモロスギを求めているかは甚だ疑問なのだが)宿に飾る分もあったら良いかもしれない。いや、飾ると言う意味なら白亜の森で見たススキもいいかもしれないと考え直す。あれはどこら辺でいつ見たのか…誰も日記に書いていなかったかもしれない。
 あの時は、余裕がなかった。
 だから思った以上に景色を見逃していた。アルノルトが地図を一生懸命書きこむのも正直必要だからだと思っていた。
――アルノルトに聞いたら、わかるかしら。
 モニカはそう思いながら眠くなってぼんやりと目を細める。春になって間もないアーモロードの日差しは今までよりも心地よくてついついうたたねしたくなってしまう。
 穏やかな気持ちのまま、船で揺られながらモニカはふ、と思う。船での移動は時間がかかる。無事に夜までに戻ってこれるのだろうか、と…。
「まぁ、戻ってこれなかったらその時はその時ね。」
 自分にしては無責任なことを言ったなと心の中で突っ込みつつモニカはもう一枚ビスケットを頬張った。

~後編に続く~
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